2024年3月コラム=啓蟄から春分へ=沈丁花の候

コラム

=啓蟄から春分へ=沈丁花の候
 生まれ育った家の母屋の左手に沈丁花の大振りの木が植わっていました。思わぬ場所でその芳香に出会った時、遠くなってしまった田舎の春を思い出します。そんな中、突然のお誘いで懐かしい友人二人と会えることに。どんどん変わり行く東京駅周辺、待合せたコーヒー店が満席で他の店へ。何年間もお逢いしていなかったけれど変わらず元気で嬉しい。グレーヘアが良く似合うKさん、白髪染めが間に合わなかったと気にするIさん、丁度白髪染めをしたばかりの間のいい私。三十~四十代の頃に知り合い、子育て中のお互いをよく知っている。折々にお会いし、時々薦める本を送ってくれる彼女達に対して、最近本を手にしない私は少し引け目がある。話の中で人生、何事が起きてもその結果の良し悪しは「人間力」に尽きるかもしれないわね、と結論付ける。人間力とは、誠実さ、基本的な優しさ、人を傷つけない教養があり、何より生きる為の清新な「気力」に満ち溢れている等々でしょうか?でも、その時私は全く関係のない田舎の土を思いました。私を優しく包んでいた素朴であたたかい土を。
会長 伊藤聖優雨