2024年2月コラム=夜のバス=山茶花の候

コラム

=夜のバス=山茶花の候
 冬至が近い、寒さ増す冬の入口のある日、私は夜遅いバスに乗りました。その日は、何故か、見慣れた窓外の風景がドラマティックに照らされたり、闇の中に沈んで行きます。「あの人は、体調が悪いと言っていたけれど大丈夫かしら。」私が苦しい時に助けてくれた言わば恩人のような人の事が頭に浮かび妙に切ない気持ちになってしまった。人との出会い、別れ、人生にはいろいろありますがお互いに心底信頼し、信頼される人がいることは最大の幸せ。信頼されるに足る人間になるには何かが足りていないと、もどかしく今の自分を思う。バスはカーブが続くすれ違いがやっとの狭い道をガタガタ走って、急ブレーキも時々かかる。遠くに見えるイルミネーションは人生に必要なエッセンスのよう。道路脇の商店や家々の灯りを次々後ろに飛ばしバスは走り、時にはヘッドライトだけが頼りの暗闇の中を通りぬけ、間もなく私の降りるバス停。バスが発車してしまうと辺りは真っ暗。その中に迎えに出てくれた家人の姿を見て、私の小さなセンチメンタルジャーニーは終わりです。明日も頑張れそう。 
会長 伊藤聖優雨