2025年4月コラム=横顔=シロツメクサの頃

コラム

=横顔=シロツメクサの頃

 バスを降りしな、見えた横顔から、お年を召した方が同じバス停で降りられるなと思いました。しかし、下車してみるとご近所の同年代の方。ご挨拶すると、いつもの彼女のお顔でしたが、バスの中での印象の違う横顔がなぜかいつまでも気になりました。
 また別の日、Tさんに案内されて介護付有料老人ホームに入られたKさんをお訪ねしました。私が大変お世話になったその方は何のご不自由もない方でした。しかし、訪れたその部屋はベランダからは家々の屋根ばかりで緑が何も見えません。ベランダにも観葉植物の一鉢もありません。花瓶には造花。(これは施設として止むを得ない理由があることを説明されました。)彼女をとても親身に気にかけているTさんの名前も思い出せないKさん、信じがたいことです。身近に長年心の病であった方が花や木を育てたり触れたりすることで普通の生活に戻った例を見ています。これでは病の進行を待つばかりで回復は難しいのでは、とTさんに話しました。「Kさん、お生まれはどちらですか?」東北の大きな町でした。「あそこの町の桜は本当にきれいね、良い所に育ったのね」話している内に、ぼんやりしていたお顔が以前のキリッとしたお顔に戻ったように見えました。パンツスーツでさっそうと動くKさんにもう一度会いたいと思いながら帰った日、「老い」を他人事と思えなくなったことを知りました。

会長 伊藤聖優雨