=義母の残した着物=葛の花の候
「そうだ!」と思い立ち、八月のとても暑い日でしたがずっと気になっていた義母の着物を衣装ケースから出してみることにしました。男の子ばかり三人の義母の着物は長男の嫁の私のもとへやって来てくれました。料理、洋裁、和裁何でも上手な姑でした。難しい着物の柄合わせも時々近所の方に頼まれていましたから、当然ここにあるものは本人が仕立てたものばかりです。一着ずつゆっくり色や柄を楽しみながら見て行きましたが私の年齢にぴったりのものばかりで一枚たりとも処分するものはなく、早く着て歩きたいと思うものばかりでした。とても丁寧にしまわれていたのでシミも無く、義母の「面倒なことを厭わずやる」という偉さをあらためて再認識しながらの作業となりました。
着物を畳むと言えば思い出すのは東京での結婚式後、名古屋でのご近所へのご挨拶回りを終え着替えをしていると、義母が傍で私の着物を畳み始めました。そして「道行は一番外に着るものだから折り目が出ないようにこのように畳むのよ」と教えてくれました。初めての女の子として私を二人して可愛がってくれました。ある日、不躾にひとつだけ聞いてみました。姑は舅に口答えを一切しません。言いたい放題の実家の母とは違うので「お義母さんはお義父さんの言うことに絶対逆らったりはしないんですか?」と聞きました。すると「どうでも良いことはハイ、ハイと言うけれど、どうしてものことだけは頑張るの」と微笑みながら言いました。筋の通った意地がなく、向こうっ気だけが強い私には到底真似はできません。金銭的には豊かではないけれど「心は錦」とずっと思っていた優しかったお義父さん、お義母さんを思い出し、急にお墓参りに行きたくなったお盆月でした。
会長 伊藤聖優雨
